ヒロシマ平和創造基金ヒロシマスカラシップ2014中村音楽奨学金奨学生レポート (2015年3月~6月)


ヒロシマ平和創造基金ヒロシマスカラシップ2014
中村音楽奨学金奨学生レポート (2015年3月~6月)

(2月は改めて掲載します。)

グラーツ芸術大学院は3月から新学期です。
ヨーロッパで過ごす春という季節が大好きな私は嬉しい想いで新学期を迎えました。
なぜ大好きなのかといいますと、春の兆しを五感を通して感じることができるからです。
まずは小鳥たちのさえずり。朝目が覚めると同時に窓の外からさえずりが聞こえます。朝、森の中を抜け道として通る校舎と校舎を繋ぐ森の存在。森の中ではさえずりに囲まれてヨーロッパの街並みとはまた別の世界です。思わず暫くの間立ち止まってその空間を感じます。鳥たちがまるで歌っているかのようです。そしてこの森を通る度にシューマン作曲の詩人の恋より第一番「素晴らしく美しい5月に」の歌詞を想います。
また、ふと足元を見るとタンポポや小花を発見。そのような時はシューベルト作曲の歌曲「春の信仰」を想い、心が喜びの気持ちで溢れます。日が暮れるのがとても早い冬から一転、春は幸せが再び始まる季節だと感じます。
そんな3月、私は今期目標をかかげていました。それは「コンクールに参加する」です。これは留学前から挑戦したいと願っていたことでもあります。何故コンクールに参加したいと考えるのか。決して賞をいただきたいということだけではありません。コンクール参加は私自身にとって糧となることです。1つの本番に向けてどのように音楽と向き合っていくか、心の状態など自分を知ることができます。また、ヨーロッパという大きな世界でまだ訪れたことのない未知の場所に足を運ぶこと、人との出会いやそこでの経験が旅の醍醐味で今後に繋がることだと考えます。そしてコンクールは「左手のピアノ作品」知っていただく大きな機会でもあります。未来の話ですが、参加者が将来指導者となった時、または審査員、彼らの生徒が右手を痛めてしまった時《そういうえば左手演奏していた人がいたな。》と左手のピアノ作品のことを想いだしていただいて、そして生徒に1つの道を示してもらえたらいいなと願っています。コンクールは1つの発信方法だとも考えます。
ヨーロッパのコンクールは小規模から大規模のものまで数多く開催されます。特に商業都市であるイタリアでは町おこしのためという理由の1つからもいたるところでコンクールが開催されています。小さなコンクールでは一つ一つが手作りのようです。将来企画などにも携わりたいことと、演奏者として運営する側の気持ちを分かりたいと考えているので間近で様子を拝見できることはとても勉強になります。また大きなコンクールでは、参加者たちのコンクールに対する姿勢、態度が強くたくましく感じます。それは、コンクールを受けることに対して大きな想いがあるからなのではないでしょうか。美しいなと感じます。
私は3つのコンクールに参加しました。それぞれ2位、1位、2位をいただきました。
コンクールはこのように嬉しい経験をさせていただきましたが、グラーツ内で受けた演奏者募集のオーディションでは悲しい、しかしながらも次に繋がるであろう経験をさせていただきました。
グラーツ内の病院などでお仕事として演奏ができるというオーディションを受けました。音楽家として尊敬している先輩からのアドヴァイスをいただいて、その際、「フォーカルジストニアのこととこれまでの経緯私が何を行いたいのか」ということをドイツ語で文章にして提出しました。後日組織の地位が一番上の方から直接ご連絡をいただくことができました。本来ならば、係の方が合否も発表を連絡しますが、わざわざ上の方が連絡してくださったという丁寧な対応に感謝しています。その内容は私にとっては悲しいものでもあり、とても現実的なものでした。「フォーカルジストニアとなったことはとても悪い事である。あなたのポジティブなところはとても素敵です。しかし、あなたの道は必ずしもピアノではなくてもいいのではないでしょうか。」5年前と2年前にもお医者さま、そして他国の教授から似たようなことを言われたことがあったので、その時の出来事を想い出しました。《いつものことだ》と思っても、約2週間落ち込んでしまいました。彼らが言うことは理解しています。左手のピアニストとしての道はとても難しいです。需要はありません。しかし、この道を選んだのは私です。
今、私が選んでいる道、そしてこれから経験することで将来どのように進んでいくのかは誰もわかりません。自分を信じ、支えてくださる方、そして今回のように外国ならではの誠意を持って意見を言っていただいたことに感謝の気持ちを込めてこれからも精進していきます。
そして、この出来事があった際、涙を流しながら話す私を優しく受け止めてくれた、グラーツにいる日本人、クロアチア人の友人、ドイツ・ハノーファーに留学している友人、そして関西で活躍している左手のピアニストの友人に本当に感謝しています。音楽についての深い気持ちを話せる仲間がいることは本当に有難く、私は幸せものだと感じています。
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Profil

Yasuyo Segawa

Author:Yasuyo Segawa
左手のためのピアノ作品を演奏しています。
公式ホームページ: http://yasuyo32mini.web.fc2.com/
2012年よりオーストリア・グラーツ芸術大学大学院に留学。
片手作品も両手作品も垣根なく誰もが音楽を楽しむことのできる未来を目指したいと願い、研鑚を積んでいます。 
片手作品に興味を持っていただけましたら嬉しいです。
人との出会い、笑顔をみること、自然が大好きです^^*♪

-profile-
1988年 広島県出身 3才よりピアノを始める 

2005年 演奏時右手指に違和感を感じ、症状が悪化する

2006年 安田女子高等学校を経てエリザベト音楽大学に入学、10月局所性ジストニアと診断されその後左手作品と出会う

2009年 左手のピア二スト智内威雄氏に出会い、左手作品のレッスンを受け始める

2010年 エリザベト音楽大学音楽学部演奏学科を卒業、卒業演奏会、第80回読売新人演奏会など各新人演奏会に出演、
    広島プロミシングコンサート 2010 にて広島交響楽団と吉松隆作曲左手のためのピアノ協奏曲「ケフェウス・ノート」を共演
    広島国際文化財団ヒロシマスカラシップ2010中村音楽奨学金奨学生に選出される

2012年 新進演奏家育成プロジェクトにて広島交響楽団と M.ラヴェル作曲左手のためのピアノ協奏曲を共演
    オーストリア・グラーツ芸術大学大学院に左手作品のみで受験、合格する

2013年 左手のピアニスト4人によるコンサートを地元の広島市・呉市にて企画、開催
     one hand piano music series-1 瀬川泰代「はじまり」の CD を発売する
     ポーランドにて演奏会に出演、スロヴァキアやイタリアの講習会に参加する
     月刊ショパン7月号、留学リレーエッセイにて執筆する
 イタリアで開催されたコンクールにて左手作品を演奏し、1位Assolutoを受賞
     ワンハンド・ピアノフェスタ!~片手でチャレンジ!~を「左手のアーカイブ」プロジェクトのメンバーと企画、東京にて開催
      ヒロシマ平和創造基金ヒロシマスカラシップ2013中村音楽奨学金奨学生に選出される
      府中ライオンズクラブ主催「瀬川泰代ワンハンド・ピアノリサイタル」にて演奏、好評を博す
2年連続アオギリ平和コンサートに出演、被爆ピアノの演奏をおこなう

これまでに平本恵子、濵本恵康、横山幸雄、智内威雄の各氏に師事、また新聞、ラジオ、テレビなど各メディアに取り上げられる

現在、オーストリア・グラーツ芸術大学大学院に在籍し池場文美氏に師事

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